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Canary Ensis



 九月の空はなにか、もの哀しい。

華やかな季節が幕を閉じようとする、静かな空気の下に、色彩の翳りを見てしまうから…
寒い季節の訪れを予感させる、冷たい空気を感じてしまうから…

 

 よく晴れ渡った青空だった。
「海が見たいな」
珍しくわたしからそんなわがままを言って、平日の昼間に、川島君の赤い『フェスティバ』を、海まで走らせてもらった。

 高速道路を東に走り、山道の国道を抜けると、目の前いっぱいに真っ青な海が広がり、潮の香りが鼻腔をくすぐる。

九月の海は、だれもいない。
ほんとうに澄みきった青と、白だけの、おだやかな世界だった。
静かにゆっくりと、高い日射しに、キラキラ光る波がなぎさを濡らし、すうっと水が引いたあとに、砂に滲んだ透明な水の流れが、綺麗な模様を残していく。
潮のざわめきのほかには、なにも聞こえない。
そんな砂浜に降り立ち、わたしと川島君は、あてなく歩く。

「さつきちゃんとどこかに行くなんて、久し振りだな」
まぶしそうに手のひらをかざして、川島君は遠い水平線を見ながら、言う。
「こういう、ちゃんとしたデートは、二ヶ月ぶりよ」
わたしは、なぎさに散らばっている小さな貝殻を拾いながら、答える。
「そんなになるかな? もっと会っていたと思うけど」
「約束して、朝からふたりっきりで会って、どこかにいくのなんて、川島君が『東京に行く』って言い出した、七月はじめのデートのとき以来よ」
「そういえば東京じゃ、会っているときでも、他の人といっしょだったり、残業のあとだったり、帰る間際のあわただしさのなかだったりで、こうしてふたりで一日ゆっくりするなんてこと、なかったな」
「今日はわたし、ふたりだけで、のんびり過ごしたい」
「それもいいかもな」

 わたしたちは九月のなぎさを、ただ、歩いていた。
波は飽きることもなく、寄せては返し、また打ち寄せてくる。
それはまるで、時が繰り返すだけのような、いつまでも終わらない、メビウスの輪。
東京でのめまぐるしい時間の流れが、遠い昔のことみたい。

「座ろうか」
「ええ」
川島君は海に向かって、腰をおろす。わたしはロングスカートの裾をひざの裏に巻き込みながら、その隣にしゃがみこむ。
川島君は、遠くの沖を、口を結んだまま見つめる。
わたしは、そんな彼の横顔を、ちらりと覗き見る。
そう言えば、まだ川島君とつきあう前は、彼をずっと見つめていたくても、なかなかできなかったな。
川島君の心のなかを知りたくて、視線を合わさないように、彼の横顔をいつも盗み見ていた。

どうして、そんなつきあう前のことなんか、憶い出しちゃったんだろ?
最近の彼が、あの頃みたいに、わたしにはちょっと遠い存在に感じられるから?

 

「川島君、東京に行って、なんだか変わったね」
なにもしゃべらないまま、じっと海を見つめる川島君に、わたしは遠慮がちに言った。
彼はそんなわたしの気持ちを知る風でもなく、なにげなくわたしを振り返って訊く。
「どんな風に?」
「なんてのかな… 『大人になった』っていうか、夏休み前の川島君より、成長した気がする。いろんな意味で」
「おとな… か」
川島君はわたしの言葉を繰り返し、足元の巻貝のかけらを拾って、それを見つめて言う。
「やっぱりぼくは、ただの田舎のカメラマン志望のガキだったよ」
「え?」
「東京には凄い人たちがいっぱいいて、ぼくなんかまだまだ、カメラマンのスタートラインにも立っていないひよっこだってのを、痛いくらい実感したな。アマチュアカメラマン向けの写真雑誌で金賞とったなんて、自慢するのが恥ずかしいくらいだったよ」
「そうなの?」
「星川先生の所で、責任ある仕事を任されて、プレッシャーを感じながら写真撮るのって、技術以上に、精神力もなきゃダメだった」
「仕事なんだもの。責任はついてまわるだろうし、趣味とかで気軽にやるのとは、やっぱり違うんでしょうね」
「そうなんだ。ぼくも写真にはまじめに取り組んでいたつもりだったけど、それが仕事となると、真剣さの度合いが、格段に違うんだよ。ぼくの写真なんて所詮、学生の習作程度のもんさ」
「でも、星川先生って、モルディブじゃ緊張感もなくて、ニコニコしながら写真撮ってたけど」
「それがあの先生のすごい所なんだよ。そうやって周囲をなごませて、相手の肩の力を抜かせてリラックスさせて、モデルの魅力を引き出すんだ。
あの笑顔の裏に、そういう周到に計算された写真技術があったなんて、いっしょに仕事して、やっと気づいたよ。
いや、あの先生のことだ。案外天然なのかもしれないな」
「あは」
「はは…」
「…川島君」
「なに?」
「東京に行ったこと、後悔してるの?」
「そんなことないよ。むしろ、行ってよかったって思ってる。自分の力量を知る、いい機会だったって。じゃなきゃ、『井の中の蛙』で終わる所だった」
川島君はそう言うと、また視線を沖の方に移し、遠い人になってしまう。
わたしはかすかな不安を覚えた。

わたしの知らない街で、わたしの知らない時を、わたしの知らない人たちと過ごして、厳しい世界のなかでもまれ、一足先におとなになってしまった川島君が、なんだかちょっぴり他人に見える。
わたしとは遠く離れていたせいで、きっとわたしのことも、以前より客観的に見れるようになったのかもしれない。
わたしより魅力的な女の子なんて、世の中にはたくさんいることを、東京で思い知ったのかもしれない。

『会えない時間が愛を育てる』なんていうけど、ほんとにわたしたちの愛は、育っているの?
わたしはまだ、学生で、そういう社会の厳しさも知らず、まだまだ子供のままで、川島君に置いていかれてしまってる。
この先、彼がわたしより先に卒業して、社会に出ても、わたしたちは今までみたいに、ちゃんとやっていけるの?

「…」
わたしは黙って、ただ、川島君の肩にもたれかかった。
そうやって寄り添っていないと、なんだか心もからだも離れてしまいそう。
川島君はそんなわたしの肩に手をまわし、わたしを抱き寄せて、やさしいキスをひとつ、くれた。

「川島君」
「ん?」
「わたしのこと、好き?」
「当たり前だよ」
「そんな返事じゃなく、ちゃんと言って」
「好きだよ」
「いつから?」
「去年の秋、高校を卒業して、さつきちゃんと再会してから… いや。もっと前。
高校二年になって、さつきちゃんと同じクラスになってからかな」
「どうしてわたしを好きになったの?」
「さつきちゃんが、だれよりも可愛かったから」
「ほんとに?」
「ああ」
「じゃあ、わたしのどこが好き?」
「前にも言ったよ」
「また言って」
「全部だよ」
「嫌いなところなんて、ほんとにないの?
「ないよ」
「わたし自身が、自分の嫌いなところ、たくさんあるのに?」
「それを引っくるめて、全部好きだよ」
「嬉しいけど… 嘘っぽい」
「ははは。今のところ、さつきちゃんは満点の彼女だよ」
「今のところ… かぁ」
「これからも、だよ」
「未来のことなんて、わからないじゃない」
「そりゃそうだけど」
「これからもずっと、川島君はわたしのこと、好きでいてくれるかなぁ?」
「当たり前じゃないか」
「よかった」
「今度は、『そんな返事じゃなく』なんて言わないんだな?」
「そうだった。ちゃんと言って」
「これからもさつきちゃんのこと、ずっと好きだよ」
「じゃあ、わたしたちが今からいろいろ約束しても、それはいつまでたっても、意味があることなのね」
「どういうこと?」
「恋人同士の約束って、なんか虚しいじゃない。別れてしまったら、その人と交わした約束なんて、ぜんぶなかったことになっちゃうでしょ」
「まあ… 確かに、な」
「だから… 例えば、『誕生日には毎年花束をあげる』って川島君が約束してくれたら、わたし、来年も再来年も、10年先も、ずっと花束をもらえるってことよね?」
「そうだよ」
「じゃあわたし、川島君といろいろ、約束したい」
「どんな約束?」
「わたしの誕生日には、毎年花束をちょうだい?」
「あはははは… いいよ。プレゼント以外にも、花束をあげるよ」
「それに11月18日は記念日だから、毎年お祝いしましょ?」
「なんの記念日?」
「忘れたの?」
「なわけないよ。ふたりでまた、もみの樹の下に座りたいね」
「ふふ。それもいいわね」
「でも、あそこは女子大の中だから、さつきちゃんが卒業したら、無理かな?」
「卒業しても,文化祭にはいっしょに行きたいな」
「そうだな」
「ねえ。川島君の誕生日には、なにがほしい?」
「そうだな。とりあえず… さつきちゃんがほしいかな」
「とりあえず?」
「メインディッシュとして」
「もう。エッチなんだから」
「ぼくはいつでも、さつきちゃんがほしいんだよ」
「ふふ。いいわよ。川島君の誕生日には、わたしをあげる」
「誕生日だけ?」
「いつでも」
「さつきちゃん」
「ん?」
「目を閉じて」
「…」

だれもいないなぎさで、川島君はわたしのおしゃべりな唇をふさいだ。



「12月になったら、もう一度、この海を見たいな」

長いキスのあと、わたしは海を見つめて、なにげなく言った。
「12月? もう寒いし、こんなに綺麗じゃないと思うよ」
「だからよ」
「だから?」
「海って、こんなに穏やかで、天気のいい日ばかりじゃないでしょ。
今度この海を見るときは、鉛色の空で、真っ黒い海に、牙をむきだしたような白い波が、ゴウゴウとうねっていて、そんな海に、シンシンと、雪が降っているの。
ね。
海に雪が舞い落ちるのって、なんだか素敵だと思わない?」
「そうかな?」
「今日は絶対、晴れがいいの。穏やかで綺麗な海がいちばん好き。だけど、12月にそんな暗い海を見て、この海はそうやって荒れ狂うこともあるんだって知ってしまえば、わたし、今のこの景色を、もっと好きになれそうな気がする」
「そんなもの?」
「海にいろんな景色があるように、人にもいろんな表情があるじゃない?
泣いてる顔に笑ってる顔。怒ってる顔。
だけど、悲しい気持ちを知っていなければ、本当に幸せな気持ちってのがなんなのか、わからないと思うの」
「さつきちゃん?」
「わたし、幸せに慣れすぎてた。川島君といっしょにいられる、この幸せな時間は、わたしにとって当たり前のことだって、思うようになってしまってた」
「どうしたんだ? さつきちゃん、今日はちょっとおかしいよ」
「そんなことない。ふつうよ」
「そう?」
「川島君。男の人って、ふたりの女の子を同時に、同じくらい愛せるものなのかな?」
「え? それは人によると思うけど…」
「じゃあ、川島君はどうなの?」
「ぼくは… そりゃ、ひとりの人だけを愛したいけど」
「けど?」
「でも、その人だけしか見えないようになるのは、イヤかな」
「どういうこと?」
「よくいるじゃないか。恋人ができたら、その相手が世界の中心になってしまうようなタイプ。
それって、自分を持ってなくて、相手にすべて依存しているだけじゃないかな。
そういう人たちって結局、世界を狭めているって気がする」
「ふふ。川島君らしい」
「でも、どうしてそんなこと、訊くんだい?」
「わたしね… 東京に行って、感じたの」
「なにを?」
「川島君は、わたしのことだけを考えているわけじゃない、って」
「そんなことないよ。いつでもさつきちゃんのことは、ちゃんと考えているよ」
「そうじゃないの」
「え?」
「川島君には、『カメラマンになりたい』って夢があるでしょ?
その夢と、わたしと、どっちが大事?」
「そんなの、同じ天秤に乗せられないよ」
「そうなのよ。川島君にはそうやって、いくつも天秤があるの。仕事の天秤や、趣味の天秤。人間関係だって、いろんな天秤を持っているみたい」
「…」
「だけど、わたしの天秤は、ひとつしか、ないみたい」
「え?」
「その天秤に乗っているのは、川島君。今はなにをもう片方に乗せても、針は川島君の方に、傾くの」
「嬉しいよ」
「悔しいわ」
「だけど、ぼくより重いものが、さつきちゃんのたったひとつの天秤に乗せられてしまうと、さつきちゃんはもうぼくのことなんか、どうでもよくなるんだな」
「そんなこと、ない」
「天秤がひとつってのは、そういうことだろ? ぼくがたくさんの天秤を持っているのなら、他に大事なものができても、さつきちゃんのことはずっと、天秤に乗せたまま、とっておけるわけだ」
「それって、『他に好きな人ができる』ってこと?」
「そうじゃないよ。例えばの話だよ」
「例えばでも、そういうの、イヤ」
「ごめんよ」
「…ううん。川島君はあやまること、ない。これはわたしのワガママだから」
「いや。ぼくが悪かったよ」
「なにが?」
「ディズニーランドのこととか… もっと、さつきちゃんの気持ちを考えてあげなきゃ、いけなかったのに」
「その話は、もういい」
「だけど…」
「今は聞きたくないの」
「言い訳とか、説明とか、させてもらえないってこと?」
「今日は、綺麗な海だけが見たいって、言ったじゃない。だから、その話はやめましょ」
「でも…」
「川島君、東京で言ったでしょ。『さつきちゃんは、ぼくを疑ってるのか?』って」
「ああ… そう言えば」
「わたしのこと、『好き』って言ってくれる川島君の言葉を、わたし信じてるから。だから、言い訳も説明も、聞かなくっていいの」
「さつきちゃんは、それで納得してるのかい?」
「走りましょ」
「え?」
「キャンバストップを全開にして、海沿いの国道を、川島君の赤い『フェスティバ』で走りたいな」
「…ああ。そうするか」



 赤い『フェスティバ』は、遮るもののほとんどない、海沿いのドライブ・ウェイを、滑るようにして走っていく。
左手には、午後の日射しを受けて、キラキラと水面を輝かせている海が、ずっと広がっている。
しばらく走ると、まるで地中海のリゾート地のような、イタリア風の黄土色の瓦が連なった、白いリゾートホテルが見えてくる。
「素敵なホテル」
「寄ってみようか?」
「うん」
川島君はクルマのスピードを落とし、ウインカーを出す。
赤い『フェスティバ』はリゾートホテルの駐車場に、静かに止まった。

 

 二階の部屋の大きな窓から見える景色は、ホテルの青々とした庭が目の前に広がり、その向こうにはコバルトブルーの海と、真っ白な砂浜。

「素敵な眺めね」
「まるで絵みたいだな」
わたしはバルコニーに出て、海を眺める。川島君はそんなわたしをうしろから抱きしめて、頬を寄せて、同じ景色を見つめながら、言う。わたしは川島君の腕に、自分の手を重ねた。
「風が渡ってくるわ」
庭の熱帯樹が、向こうから順に、さわさわと葉を風にそよがせ、青い芝生のざわめきが、波のようにこちらに近づいてくる。
やがて、わたしのうなじを、ゆるやかな空気の流れが、ふわりと通り過ぎていった。
わたしは風の行方を、目で追う。
それは部屋のなかへと入っていき、カーテンを揺らす。
カーテンのそばのベッドには、窓越しの九月の日射しがこぼれていて、真っ白なシーツに、まるで溶けてしまいそうな陽だまりを作っていた。

「静かね」
「そうだな」
「風のそよぐ音しか、聞こえない」
「ああ」
「ベッドにできた陽だまりが、きれい」
「あったかそうで、いいな」
「わたし、このなかで川島君に、抱かれてたいな」
「さつきちゃん、今日はなんだか、大胆だな」
「素直なのよ」
「うん。いいことだよ」
「川島君の誕生日だけじゃなく、わたしの誕生日にも、抱いてね」
「いつだって、ぼくはさつきちゃんを、抱きたいよ」
「12月になって、雪が降ったら、また今日みたいに海を見て、このホテルに来て、暖めあいたいな」
「そうしよう」
「約束、できる?」
「できるよ」
「忘れないでね」
「ちゃんと心のなかに、メモったよ」
「川島君…」
「ん?」

わたしは瞳を閉じて、キスをせがんだ。
川島君はわたしを抱きしめ、あたたかなくちづけをくれる。
唇が離れると、わたしは彼の胸に耳を当ててみる。
トクン、トクンと、心臓の音が規則正しく、響いている。
そういえば、モルディブでも、川島君の心臓の音を聞いたっけ。
あのときのわたしは、ただ夢中で、川島君を受け止めるのに、精いっぱいだった。
わたしはただ、川島君から求められるだけだった。

でも今は、少しだけわかったような気がする。
わたしは川島君がほしい。
離れたくない。
心も、からだも。
川島君を求めている。
求められるだけじゃなく、求めなきゃ、大切なものは手に入れ続けては、いられない。

わたしは彼のシャツのボタンをはずし、あらわになった胸元に、キスをしながら言った。
「抱いて」
「さつきちゃん?」
川島君は意外そうにわたしを見おろし、それでも優しいまなざしを投げかけ、両腕でわたしを包むように抱いてくれる。
そのままわたしたちは、陽だまりがいっぱい差し込んだベッドのなかに、からだを預けた。

 川島君も、今日のわたしはどこか変だと、思っているかもしれない。
わたしだって、思っている。

ディズニーランドのこととか、東京でのこととか、みっこのこととか…

東京からの帰りの新幹線で、わたしはいったいどのくらい、それらのことを考えただろう。
こうして今日、川島君に会うまで、わたしは数えきれないくらい、わたしと川島君、そしてみっこのことに想いを巡らせ、悩んだ。

川島君に訊きたいことは、いっぱいある。
ほんとうはわたし、納得なんて、してない。
川島君がほんとはだれとディズニーランドに行ったのか、訊きたくてたまらないし、東京ではみっこといったいどのくらい会っていたのかも、訊いてみたい。
だけど、そういう言葉を口にしてしまえば、わたしが恐れていたことは現実になって、わたしが大事に両手のなかに包んでいた幸せは、粉々に砕け、手のひらからみんな、こぼれていってしまいそうな気がする。
だから、わたしは結局、自分の気持ちは、心のなかに仕舞っておくことにした。
わたしは、川島君との未来を、築いていきたい。
だけどそうするには、川島君を約束で縛ることしか、思いつかない。

川島君がわたしのなかに入ってきて、溢れるほどいっぱいに広がる。
わたしは恍惚に浸りながら、彼の背中に腕をまわしてからだを開き、川島君を受け入れる。
めまいのような眩しさに、かすかに瞳をすかすと、逆さに見える大きな窓からは、九月の澄んだ空に、刷毛で掃いたような、真っ白な筋雲が流れているのが見えた。

「秋が、見える」

わたしは朦朧とした心地のなかで、うわごとのように、つぶやいた。
それは、これからの淋しい季節への、予感。

でも今は、川島君のぬくもりのなかにいる。
いつまでも、いつまでも、こうして川島君のぬくもりに触れていたい。
そう願いながら、わたしは川島君の背中を、ぎゅっと抱きしめた。

いつまでも、この幸せが続きますように…
12月の約束を、わすれないで…

END

30th Nov. 2011

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